始める前に BEFORE HOUSE-MAKING , BEFORE REMODEL
リフォームの目的を整理しよう
リフォームを進める上では、まず、「行動でなく計画」です。計画を進めるためには、『目的』と『優先順位』を明確にしなければ先に進みません。では、どのように進めれば目的と優先順位を明確にできるのでしょうか?
いきなり「目的」を明確にすることは、簡単ではありません。例えば、「断熱工事をする」という目的をいきなり言う事はできません。でも、動機ならば簡単に言うことができるでしょう。
例えば「寒いから」「狭いから」がこれにあたります。その動機から、その目的は「断熱工事をする」「広くする」となります。しかし、これに優先順位を付けるとなると、そんなに単純なものではありません。お金が湯水のごとくあるのなら話は別ですが、限りある予算の中で、ベストの目的を追及するとなると簡単ではなくなります。
では、目的を整理し、それに優先順位を付けていくには、どのような順序で行ったら良いかを考えてみましょう。
リフォームの目的は大きく「四つの目的」に分類可能です。まず、今考えている動機は、どれに当てはまるのかを考え、そして優先順位を決めていきます。最後にライフプランの中で、どの時期のリフォームなのかを考慮してまとめると、上手に目的が整理できるようになります。
四つの目的は次の通りです。
(1)『ライフスタイルの変化への対応』→ライフスタイルの変化
(2)『老朽化した住宅の構造・設備のメンテナンス』→老朽化メンテナンス
(3)『部屋や設備に対する不満点の解消』→不満点の解消
(4)『シックハウスや安全設備などへの対応』→安全設備に対応
この四つの目的で、「今必要に迫られているのはどれですか?」と聞かれると答えられないものです。Howto本には「何年たったらこの修繕が必要です。」「バリアフリーがこれからの住宅には必要です。」などと書いてありますが、住み慣れた家にバリアフリーが必要かどうかは、健康な状態では判断できません。屋根や外壁が本当に老朽化しているのかも素人では判断できません。
では、質問を変えます。「どうしてリフォームをしようと思ったのですか?」と聞かれるとあっさり答えられるはずです。動機は単純明快ですので、まず動機から目的を絞り込んでいきましょう。
進め方は、まず「一人で考える」→「夫婦で考える」→「家族で考える」→そして「第三者機関にも聞いてみる」という順序です。この時の注意点は二つです。いきなり家族全員のいる前で質問しないことです。(こうすると意見はバラバラで話が一人歩きします。)次に、必ず家族全員の意見を聞くことです。いずれ夫婦二人になるからと子供を参加させないことは間違いです。住まいは家族全ての環境に関係します。以上、二点を注意しながら進めて下さい。
それでは始めます。自分も含め家族全員に個別に一人ずつ「リフォームを考えているがどこが問題か?」「リフォームしたいところは何か?」と質問してみて下さい。
ブレーンストーミングのように相手の意見は否定せず、口をはさまず、出た意見を全てメモしましょう。この時の注意点は意見の順番です。最初に発言した項目と最後では認識度が違いますので、発言した順番を忘れずにメモすることが大切です。また、最低10個のリクエストを聞いてください。例えば「私は自分の家が広くなければそれだけでいい!」との意見が出されても、できるだけ多くの具体的な意見を聞き出すように努力してください。
すると不思議と家族が思っている共通の意見もあれば、全く違う意見も出てきます。家族が同じ認識を持っていることを確認できたり、新たな発見につながったり、面白い結果になるはずです。それだけ住まいに関して家族が会話をすることは少ないのです。
全員の意見が出揃ったところで集計してみます。全ての意見を四つの目的に当てはめて下さい。意見の内容が、例えば、「外壁が汚くなったね。」「屋根の雨漏れは大丈夫かな。」「水の出が悪いね。」となれば『老朽化メンテナンス』へ分類します。「子供が大きくなったから子供部屋がほしい。」「もっと優雅なリビングで本が読みたい。」「子供が独立したから子供部屋を倉庫に。」となれば『ライフスタイルの変化』へ。「収納が少ないね。」「北の部屋が寒すぎる。」となれば『不満点の解消』へ。「階段から何度もおちそうになったので手すりを付けたい。」「段差が気になる。」「騒音が気になる。」となれば『安全設備に対応』になります。
発言の早かったものから10点、二番目を9点として、子供と親別のグラフを作成してみましょう。グラフにするとわかりやすくなります。これで目的がはっきり整理できるはずです。
まずグラフの形に着目してみます。
親と子供それぞれに関係なく正方形に近い形のグラフができる場合は、リフォームの時期ではありません。簡単に言えば目的がはっきりしていません。新築後十年未満の時は、あれもやりたいこれもやりたいと考えていることが多く、実は必要に迫られていないことを示します。
メンテナンスや不満点などの左寄りの形ができた場合は、改善の必要に迫られており、リフォーム実施時期にあたると考えられますが、外壁や屋根などのメンテナンス時期にあたることから出てきた必要性であり、間取り・構造変更などのプラン変更に伴うリフォーム時期ではありません。これは中規模のリフォーム時期と判断できます。
逆に右寄りに形ができた場合は、プラン変更を伴う大型のリフォーム時期と判断できます。また、新築後二十年以上を経過していれば大型リフォームや新築などを考える時期ですから、この場合は、例えば集計項目が10個あったなら、その項目を半分に絞って再度集計してみてください。それでも変わらないようであれば、リフォームだけでは解決できないことを示していますので、新築も考慮に入れるべきです。大型リフォームを考える際に、新築を選択肢から外す理由として、「新築することによって、法的制限が以前より厳しくなる場合、建築面積が狭くなる」「新築ほどの予算を掛けられない(掛けたくない)」「不動産取得税がかかり、固定資産税が上がる」「引越しや仮住まいが面倒だ」「今の家に愛着がある」などがありますが、簡単な判断基準として、どこで見積りを取っても1500万円以上になる場合、かつ予算にある程度の余裕がある場合なら、新築も選択肢の一つに入れることが得策です。リフォームに執着することはありません。
その他、図の形が上寄りや下寄りの場合は、小額リフォーム実施時期であると言えます。この時期のリフォームは、仮に予算に余裕があったとしても、「ついでにその他のリフォームも一緒にしよう。」などと考えずに、最小限のリフォームをすることが最終的に得をすることになります。
例題のグラフは、四十代に見られる典型的なグラフです。親子のグラフが全く重ならないのは、考え方が全く違うから当然です。子供は不満点を主張することばかりで、家のメンテナンスのことは考えていません。親はメンテナンスのことや家族のライフスタイルを常に考えています。このように、親子の意見が分かれる時もプラン変更を伴うリフォーム時期ではありません。その理由は、リフォームをしてもすぐに不満がでる結果になることが多いからです。右寄りの形を示し、親と子の形がグラフ上で重なってきた時が、プラン変更を伴う大型リフォームには最適の時期と言えます。
このように、目的の優先順位(意見が出てきた順番)を基に点数化し、グラフ化してみれば、視覚的に家の状態や家族の考え方をまとめることができます。年代別の典型的なグラフの形はあるのですが、まずはご自分で作ってみてください。改めて、ご自分たちの目的や、しなければならないことが明確になるはずです。時間に余裕があれば、毎年作ってみると、その意見に変化が見られ面白いかもしれません。また、親子のコミュニケーションにも良いかもしれません。